成島店薬剤師のTです
季節はずれですが、インフルエンザについて勉強していると、こんな発見がありました。
「海外では、経鼻接種のインフルエンザワクチンが使われている」
「今後、筋注の痛みから解放されるのでは?」
少し調べてみました。
日本ではもちろん未承認ですが、欧米では弱毒性生ウイルスを経鼻接種するワクチンが使用されています。
生ウイルスを用いるため、広い交差反応性を持つ抗体、
つまり流行株との抗原性が完全に一致しなくても有効期待できる点が最大の特徴です。
流行株に左右されにくいということから、日本でも個人輸入してワクチン接種を導入する医療機関もあるみたいです。
製造販売元である米MedImmune社のデータによると、
2~5歳の摂取群では、流行株とワクチン株が一致していた場合の有効率は89.2%、
不一致であった場合でも79.2%とあります。
データだけを見ると非常に効果の良い点ばかり目に入りますが、問題もあります。
「新型インフルエンザに対して効果が低いこと」
そして最大の問題点は「生ワクチン」であることです。
生ワクチンには微弱ですが感染性があり、
接種によってインフルエンザ様症状が出る可能性があります。
そのため接種の対象は2~49歳の健常者に制限されています。
インフルエンザで重症化するリスクの高い乳幼児(2歳未満)や高齢者には使用できません。
生ワクチンの問題を克服すると期待されているものが、次世代の経鼻ワクチンです。
研究については日本が一歩リードした状態のようです。
国立感染症研究所では、より安全な不活化(全粒子)ウイルスを用いた経鼻ワクチンの開発に着手しています。
不活化型に生体成分類似アジュバントを加え、作用の増強をしたワクチンです。
【アジュバンド:抗原と混合して生体に投与することにより、投与した抗原に対する免疫応答を増強する物質】
鼻腔内の粘膜免疫に着目し、
インフルエンザウイルスに対抗する中核となるIgA抗体の誘導を増強する目的でアジュバントを加えています。
採用したアジュバントは、polyI:polyC12Uという成分で、
内因性インターフェロン誘導薬として既にヒトでの安全性が確認されている成分になります。
動物実験でこの経鼻ワクチンによる感染防御効果、交差防御効果が出ているそうです。
また、健常者を対象とした臨床研究でも、良好な結果が得られているようです。
民間でもアジュバントに生体成分である肺サーファクタントの類似合成品採用した研究が進んでいるようです。
肺サーファクタントには抗原提示細胞への抗原運搬作用があり、
肺サーファクタント類似の人工合成粘膜アジュバントを採用した研究のようです。
合成品で生体成分由来ではないため安全性が高く、効果も良いようです。
動物実験の前臨床試験での有効性評価が終了しているそうです。
インフルエンザワクチンも痛い注射から解放され、点鼻がメインになる時代が来るのかもしれません。