トランス脂肪酸とは天然にできるものと油脂の加工・精製時にできるものがあります。
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牛や羊など動物中の微生物の働きによって生まれる微量なトランス脂肪酸
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植物油、魚油などを加工する際に水素添加して硬化させる過程で生じるトランス脂肪酸
1に関しては微量で影響が少ないため今回は2について話を進めます。
身近なところではマーガリンやショートニング、ファットスプレッドに多く含まれる油脂のことで、パン・ケーキ・ドーナツ・スナック菓子・市販のコロッケやポテトフライの揚げ油などに広く使われています。
これらを一定量摂取すると、LDLコレステロール(いわゆる悪玉)が増えてHDLコレステロール(善玉)が減る、これにより心臓病のリスクが高まるというのです。
アメリカでは2018.6からトランス脂肪酸の使用が経過措置→全面禁止になりました。スーパーに並ぶ商品にも、レストランで食べる食事にもトランス脂肪酸は使ってはいけないことになっています。そしてカナダでも2018.9から禁止になっています。
では日本はどうでしょうか?現段階ではトランス脂肪酸の規制は行われていませんし、使用している場合でも表示義務はありません。普通、海外のほうが規制が緩くて日本のほうが厳しいイメージだったのでなんだか意外じゃありませんか?これでは自分で気を付けるしかありません。
WHO(世界保健機構)によると、トランス脂肪酸の摂取量を総エネルギー摂取量の1%未満に抑えるように勧告しています。日本人のトランス脂肪酸の平均摂取量は0.3%と推計されており、通常の食生活では健康への影響は少ないとしています。(内閣府・食品安全委員会) ちなみに2000~02年のアメリカ人1人当たりの摂取量は2.2%でした。
おそらくトランス脂肪酸の摂取量自体が低いことと、日本人は諸外国に比べ魚を多く食べていることなどからそれほど心疾患のリスクも高くなく、よって規制にも至ってないのではないかと思います。
しかし2016年の厚生労働省の調査によると、日本人成人男性の約30%、成人女性の約40%が目標の範囲を超えてトランス脂肪酸を摂取していることが明らかになっています。女性のほうが摂取量が多いのは、パンケーキに大量のホイップクリームやコーヒーショップでのホイップクリームトッピングなど女性が好むスイーツに脂質が多いからでしょうか。
今はまだ規制も表示義務もありませんが健康に良くないことは明らかなので、消費者庁は食品メーカーに対してトランス脂肪酸に関する情報を自主的に開示するよう要請しており、一部メーカーがトランス脂肪酸の使用を制限している動きもあります。加工食品や外食など、日本ではトランス脂肪酸を100%避けることは無理かもしれませんが、せめて自宅ではマーガリンの使用を避けるなど消費者が自主的に考えていくことが大切だと思います。